週1回の基礎インスリン製剤「アウィクリ」について
糖尿病治療薬は日々進歩しており、毎年のように新薬が登場しています。このたび、世界初となる週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ」(インスリンイコデグ)が使用できることになりましたのでご紹介です!
単位数と投与方法について
もともと持効型インスリンを使っている人
→たとえば、毎日トレシーバ8単位を打っている患者さんがいたとします。これをアウィクリに切り替える場合、週に1回、7日分をまとめて打つので8×7=56単位となります。実際は、アウィクリは10単位ごとのダイヤルになるので、より少なめの50単位を注射することになります。ただし、アウィクリは効果を発揮するまでに時間がかかる製剤ですので、基礎インスリンからの切り替えの場合は、初回投与のみ1.5倍を投与することが推奨されています。例えば初回のみ70単位の注射を行うことが推奨されます。
インスリンを使ったことのない人
→血糖値や体格などを考慮して30~50単位から開始するのが一般的です。
アウィクリの投与は、毎週同じ曜日であれば注射する時間が多少前後しても問題ありません。
ただし、注射を忘れた場合は気づいた時点で直ちに注射し、その後のスケジュールを調整します。次の注射は、元の曜日に戻すのではなく、4日以上の間隔を空けてから行い、その後は再び1週間ごとのスケジュールに戻します。
在宅医療においてのメリットが大きい!
週1回のインスリンは、特に在宅医療の分野でその真価を発揮すると考えられます。高齢者や要介護の患者は、日々の自己注射が負担となり、インスリン注射が困難な例が少なくありません。訪問看護師や在宅医が週に1回注射を行うだけで済むアウィクリのような製剤は、今の介護保険制度にマッチしていると言えます。
アウィクリの使用が適している方とは?
ONWARDS試験(下記に記載)の結果を踏まえると、1型糖尿病の方にはアウィクリではなく、既存の基礎インスリン製剤であるトレシーバ等を使用するのが最善と考えられます。
また、アウィクリは統計的な有意差はないものの低血糖のリスクがやや高い傾向にあるため、既存の基礎インスリン製剤と比較して必ずしも優れているとは言い難い状況です。
そのため、2型糖尿病の方についてアウィクリの使用が適しているケースは、以下のような特定の条件に限られると考えられます。
・認知症などにより、患者自身でインスリンを注射するのが難しい場合
・注射が苦手、または心理的・身体的な理由で毎日インスリンを打つことが困難な場合
まとめ
いかがでしょうか?アウィクリのような週1回のインスリン製剤は、単に利便性を向上させるだけでなく、血糖コントロールを安定させることで合併症のリスクを軽減する可能性も秘めています。加えて、基礎インスリンの注射回数が毎日から週に1回になることで、これまでインスリン治療を躊躇していた患者や、在宅医療を受けている高齢者にも適応が広がることが期待できます。
新薬のため2025年12月1日までは、月に2回受診可能な方に限り処方が可能です。
早期にアウィクリを使用したいとご希望の方は、お早めに当クリニックへご相談ください!

(出典:ノボ ノルディスク ファーマ ホームページ)
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下記からは、アウィクリの臨床試験について記載します。少し難しい内容ですので、興味のある方のみお読みください。
アウィクリが製造販売承認された背景には、大規模臨床試験「ONWARDS試験」の結果があります。この試験は1~6までの6つの臨床試験で構成されています。それぞれの試験結果について解説します。
・ONWARDS 1試験
インスリン未使用の2型糖尿病患者を対象に、アウィクリと既存の基礎インスリン製剤であるランタスを比較した試験です。52週間後のHbA1cの減少幅は、アウィクリで-1.55%、ランタスで-1.35%となり、アウィクリの方が優れた有効性を示しました。一方で、有害事象の一つである低血糖は、52週間でアウィクリの方が約1.64倍多かったものの、統計的な有意差は認められませんでした。(https://www.nejm.jp/abstract/vol389.p297)

(N Engl J Med 2023; 389: 297-308)
・ONWARDS 2試験
基礎インスリン治療中の2型糖尿病患者を対象に、アウィクリと既存の基礎インスリン製剤であるトレシーバを比較した試験です。26週間後のHbA1cの減少幅は、アウィクリで-0.93%、トレシーバで-0.71%と、アウィクリが優れた結果を示しました。低血糖については、アウィクリの方が約1.93倍多い結果でしたが、こちらも統計的な有意差はありませんでした。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37148899)
・ONWARDS 3~5試験
これらの試験も2型糖尿病患者を対象に実施され、HbA1c 7.0%未満達成率や治療満足度でアウィクリが優れているという結果が得られました。
・ONWARDS 6試験
インスリン治療中の1型糖尿病患者を対象に、アウィクリとトレシーバを比較した試験です。26週間後のHbA1cの減少幅は、アウィクリで-0.47%、トレシーバで-0.51%と、両者の有効性は同等という結果でした。しかし、低血糖についてはアウィクリの方が約1.89倍多い結果が示されています。
(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)02179-7/fulltext)